2015年11月3日火曜日

南三陸活動報告(2015年9月19日~21日)

919日 南三陸町立歌津中学校・吹奏楽部 訪問レッスン
920日 第5回南三陸町無料お茶っこコンサート開催
921日 南相馬市無料お茶っこコンサート開催

919日≫
南三陸町立歌津中学校・吹奏楽部を訪問し、中学生達へのレッスンを行いました。

震災の年の秋から毎年交流している歌津中学校吹奏楽部の皆さんと今年もお会いすることが出来ました。私たちが到着すると、玄関で生徒さんがお出迎えしてくれました。
昨年は部員数が5名と、かなり少なくなってしまったとのことで、先生方も残念そうにしていらっしゃいましたが、今年は10名に増えていました。
早速音楽室へ移動し、輪になり一人ずつ自己紹介を行いました。
中学生らしく照れながらニコニコ笑顔でご挨拶してくれました。

《中学校の玄関を入ると今年も手書きの歓迎メッセージが♪》














みんなで輪になって自己紹介≫

その後、パート毎に分かれてレッスンを行いました。
部員数が増えたとはいえ、小編成バンドで厳しい状況のようで、1ヶ月前にユーフォニアムからホルンに転向した生徒さんや、普段はトランペットを演奏しているものの、アンサンブルコンテストではアルトサックスを担当するという生徒さんもおられました。
レッスンでは楽器のメンテナンスや指使いなどの基礎的なことや奏法、譜読みを一緒に行いました。

レッスン後は神戸フィルメンバーも一緒に「スィングスィングメドレー」を合奏しました。
軽快な顧問の先生の指揮の元、私たちも初見の楽譜を必死で演奏しました。
何度か繰り返すうちに中学生の皆さんも、ノリ良く楽しくスイング出来るようになりました。
音色も笑顔も明るく元気な皆さんに、こちらがパワーをいただき一日目を終えることが出来ました。

《レッスンの様子》





《軽快な顧問の先生の指揮による合同演奏♪》

《合奏中にもレッスン》



920日≫
5回目となる、南三陸町でのお茶っこ(現地の言葉でお茶、お菓子を食べるという意味)コンサートを開催しました。

2013年までは、地区で最も大きい仮設住宅にある施設を借り、全員でのコンサートを行っていましたが、行きたくても足が無いので聴きに行けないとの声を頂き、何とかより多くの方に聴いて頂くことはできないものかと、2014年より、小編成のアンサンブルに分かれて各仮設住宅の集会所を訪問するスタイルに変更しました。

現地の方との距離も近く、このスタイルが好評だったことから、今年も昨年と同様に、小編成のアンサンブルに分かれ、仮設住宅と、新しくできた町営の復興住宅の集会所を訪問しました。

復興住宅での演奏は、これまで生活してきた仮設住宅から出られた方々が、また一から新たなコミュニティを作る必要があるとのことで、コミュニティの活性化の為に、ぜひ演奏しに来て欲しい、とのお声をいただき、訪問する運びとなりました。
毎年訪問している仮設住宅では、演奏会の始まる1時間も前に来て待ってくださっている方がたくさんいらっしゃいました。

復興住宅では、音出しをしていると徐々に人が集まり、お客さんで会場が賑わいました。

どの会場でも、演奏が始まると嬉しそうに微笑んでくださる方、手拍子をしてくださる方、目を閉じてじっくり聴いてくださる方や、歌を口ずさみながら聴いてくださる方など、皆さん思い思いに楽しんで聴いてくださいました。

「ワルツィング・キャット」では、楽器による猫の鳴き声に顔をほころばせる若いお母さん。
唱歌を、目に涙を浮かべて聴いてくださるお年寄り。
ジブリメドレーでは、こどもたちが元気いっぱいに歌ってくれました。
そして、歌津のご当地ソング、ウタチャンソーランでは、手拍子をする人、曲に合わせて歌う人、会場が一体となって盛り上がりました。

コンサートが終わると「もっと聴きたかった~!」「毎年楽しみにしている」「なかなかこのような機会はないから続けて欲しい。」と話しかけてきてくださる方がいて、とても嬉しい気持ちになりました。

また、「今度はこんな曲をやってみてほしい。」「この曲は知ってる?」「曲をオーケストラでやって、こどもたちが歌うのはどうかな?」と、地元の方も私達も、夢が広がりました。

復興住宅に住んでいらっしゃる方からは、「復興住宅に入り、芸術に触れる機会や人が集まることが少なくなってきていることから、またこのような機会を設けて欲しい。」
また、仮設住宅に住んでいらっしゃる方からは、「私は仮設を出て、ひとりで復興住宅に移ることになったけれど、また新しいコミュニティに入っていかなければならないのは少し心細いよ。またそちらにも来てね。」とおっしゃっていました。

演奏についてのアンケートには、"震災から4年半経った今だからこそ、芸術での支援は本当に嬉しいと思える。このような心の支えとなるような活動を是非続けて欲しい。"と書かれてあり、これからもこの活動を続けていきたいと感じました。

私たちが団体としてできることは直接的なお手伝いではないですが、温かく受け入れていただけて、優しいお言葉をいただくことができ、喜んでいただけているのかな、もっといろいろできることがあるんだなと、本当に嬉しく思いました。

コンサートの様子≫



コンサートの後の和やかな交流のひと時≫




宿で一緒に宿泊していた元大学の先生でNPO法人で現地調査をしている方のお孫さんが書いた物です≫

ボランティアさん達による飾り付け≫

毎年好評のボランティアさん達によるスーパーボールすくい≫


震災当初の歌津はまだ瓦礫も多く、震災の爪痕の残る町にとても衝撃を受けましたが、毎年来るごとに徐々に町が変わってきているように感じます。今年は盛り土をして土地全体が高くなっていました。道も去年とだいぶ変わり見違えました。土の壁ばかりの町は少し寂しく感じましたが、これからどんどん復興へと向かっていってほしいと思いました。

町にはいたるところに7mの盛り土が作られていました≫


新しくできた復興住宅≫

一方でまだまだ手つかずの場所もありました≫

「この仮設の向かいの山に杉の木を植えたのは私なんだよ。」と話してくださる方がいらっしゃり、私達には想像もできないくらい、過ごしてきた故郷を大切に思っていらっしゃるのだと感じました。

お茶っこコンサートとその後の交流の中で、地元の方の、故郷をなんとか元の姿にしたい、もっともっと元気にしたいという気持ちを、強く感じました。
そして、私たちの演奏を喜んでくださる人がいること、また、一緒にもっともっと楽しいものにしていこうとしてくださることがとても嬉しかったです。

演奏会の開催にあたっては、NPO法人夢未来南三陸まちづくり事業部(旧・素晴らしい歌津をつくる協議会)の皆様のご協力のもと、各住宅の自治会長さんをご紹介頂き、事前のビラ配りや、当日の会場設営など、現地の皆様に色々と細やかなお気遣いを頂戴しました。心よりお礼申し上げます。

921日≫
今回は初めて南相馬へも伺いました。

私達神戸フィルが南三陸で演奏をさせていただいている活動を知り、是非地元の福島の南相馬へも来てもらいたいと、ある女性からお話をいただき今回の南相馬行きが実現しました。

南相馬に来て欲しいと希望された理由は、南相馬では、足一歩の差でその土地に住むことを許されたり許されなかったりする心痛む現実があり、そのせいで、これまで仲が良かったご近所付き合いが、徐々に微妙になってしまっていたりするようなことがあるので、神戸フィルの演奏会やその後の井戸端風交流会をきっかけに、元の良かった頃の街の人々同士の空気感を取り戻したい、ということでした。
繊細な気持ちの面があるので、私達もお話には気をつけました。福島は原発の被害が大きく、神戸とは違う地震の状況があるので、神戸も地震から立ち直ったから福島の皆様もがんばって、とはなかなか言えない現実をみました。
実際に、頑張りたくても前の住んでいた場所にはもう家を建てられないんだよなぁ、とおっしゃる方がいました。

今回私達が演奏と交流会をさせていただいた場所は、福島県の東側の浜通り地区上部にある南相馬市原町区にある飲食店“みんなのキッチン”でした。そこは、正にご近所の方ならみんな知っている街の食堂のような場所で、今回のコンサート交流会をするには打って付けの場所でした。

そのおかげで、閉鎖的な雰囲気が漂っている中、交流会もあるというだけで人が集まるだろうかどうか、という雰囲気があった中、又、お彼岸で人が集まりにくい中、たくさんのお客様にお越しいただき、演奏を聴いていただき、和やかなお話の時間を過ごす事ができました。
演奏の最後には、“みんなのキッチン”の店長さんもトランペットが吹けるということで、神戸フィルメンバー全員とのコラボ演奏もし、会場はとても盛り上がりました。

コンサート終了後には、「最近はボランティアも無い中、皆さんは良く来てくれた、おかげで久しぶりに演奏を聞くことが出来たし、いろいろ話ができて良かったよ
、また、「私達は今は風評被害に悩まされているの、あなたが帰ったら皆さんに伝えてね
、「今回だけで忘れないで
、「この時期からだからこそまた来てくれませんか
、等々たくさんの声をいただきました。

交流会の後は、現地を車で案内していただきました。一本松の辺りは、今は立ち入り禁止になっていて、何も無い平地が一面に広がる寂しい景色が続いている状況でした。
何も無い中ポツンと残る球場では、津波発生当時、津波から逃げようと球場に避難した人々が沢山いらっしゃったにもかかわらず、球場の中で渦を巻くほどの津波に襲われ、避難したにもかかわらず沢山の方が亡くなったとのお話も伺いました。
神戸フィルメンバーは皆、言葉を失う程の景色とお話の内容に、あらためて津波の恐ろしさを知る事となりました。

街の方では、線量計が所々に立っていて、指定数値を超えると、外に出てはいけないという放送が流れるというお話も伺いました。
南三陸とはまた全く違った雰囲気を知りました。

沢山のお話を伺うと同時に、新しい繋がりが生まれました。
今回だけで終わらない機会にしたいと強く思いました。

コンサートとその後の交流会の様子≫



コンサート終了後に南相馬市内を案内いただきました≫


高速道路や町の所々に線量計が設置されていました≫





最後になりますが、音楽での活動は、具体的に復興に寄与するような、目に見える活動ではありません。
しかし、現地の方々の憩いの場として、神戸フィルの活動を楽しみにされている方がいらっしゃること、また、私達が行って演奏することを心から喜んで下さり、元気が出た、勇気が出た、と言って下さることが、本当に嬉しく、メンバー全員が活動の意義、そして、音楽の大きな力を今年も感じる事ができました。今後も、この活動を続け、現地の方々に、忘れずに一緒にいます、というメッセージを発信していきたいと考えています。


神戸フィルの演奏会に足を運んで下さった皆様、コンサートの開催までに、現地でバックアップして下さった南三陸および南相馬の皆様、コンサートの為に全国より集まって下さったボランティアの皆様、神戸フィル後援会の皆様、および、本年もアート支援の助成を通じて、多大なるご支援をして下さった兵庫県芸術文化協会、兵庫県民の皆様に、この場をおかりして、心よりお礼申し上げます。