2013年9月15日日曜日

楽しい悩み〜音楽監督より


楽しい悩み
私たちの定期演奏会のプログラムを決める際に、一つ大きな悩みがあります。実に多くの演奏希望曲が団員から提案され、これらを聴いていただく方々にも満足いただけるプログラムとしての形を整えなければなりません。私にとってこれは最も悩ましく、最も楽しい作業です。

今回のブログラムのメインはベートーヴェンの第7番の交響曲です。団員の以前からの希望曲で、満を持しての登場です。全曲を通してリズム感がはっきりした躍動的な音楽で、ベートーヴェンの新境地を見せつけられる思いがします。
第2楽章は単純なリズムが続く葬送行進曲のようです。また第4楽章では、正にオーケストラが踊り出さんばかりの、そして体力勝負のようなエネルギーを必要とする音楽です。この曲を「舞踏の神化」と評したのはあのワグナーです。

そのワグナーが生まれたのが、この交響曲のウイーンでの初演の年でした。それが今からちょうど200年前です。その記念の年にあたり、団員の一度はやってみたい曲でもあった彼の代表的な作品、タンホイザー序曲をプログラムに入れました。この曲はオペラの内容を表す二つの要素、神の救済を願う敬虔な祈りの音楽(木管楽器とホルンの合奏で始まります)と、妖しく誘惑するような官能的な音楽(中間部のクラリネットのメロディが美しい)とで構成されています。最後は巡礼の祈りを高らかに歌いあげて最高潮に達します。

プログラムの最初は弦楽楽器だけでの演奏を聴いていただきます。ワグナーより100年後に生まれたイギリスの作曲家ブリテンの若い頃の作品、シンプル シンフォニーです。ここでの「シンプル」という言葉はきっと「簡素な」「わかりやすい」といった意味なのでしょう。シンフォニーと聞くと何か大層な音楽を思い起こしますが、これはちょっとお洒落な、4つの短い組曲のような音楽です。第2楽章は指で弦をはじく奏法(ピッチカート)で書かれていて、楽しい遊び心に溢れた曲です。

ひょっとして100年毎に偉大な音楽家や作品が登場するのではないかと思わせる、偶然の年の少し変わった面白い組み合わせの音楽をお楽しみください。

20139月 朝比奈千足